2021年の読書

2021年に読んだ本は52冊だった。年末の1週間で、読み止しにしていた安岡章太郎著「大世紀末サーカス」(小学館)、立花隆著「青春漂流」(講談社文庫)、下山達著「2050年のジャーナリスト」(毎日新聞出版)を読み終わし、今日、ここ1か月ほど読み続けてきた中野剛志著「富国と強兵」(東洋経済新報社)を読了し、週1冊年間52冊の目処に何とか届いたといった具合だ。この4冊にも、いずれもいろいろと考えさせられたが、特に「富国と強兵」は、社会と学問の歴史を踏まえた思惟の射程が長く、自分の乏しい知識の蓄えと思考の持久力では、風景を楽しみながら通り過ぎるような読書しかできなかったので、折をみて部分部分であっても腰を落ち着けて再読し、現在の日本や世界の状況と課題について思いを巡らせてみたいと思う。「大世紀末サーカス」は、安岡章太郎の知性や筆捌きも魅力なのだが、素材の面白さが格別なので、異なる手法で小説や映画、ドキュメンタリーにしたら素敵な作品が生まれそうだと思った。幕末に最初に旅券を手にした民間人として2年間の米国・欧州公演に出かけた軽業師一座を、パリで公演を観た徳川昭武や渋沢栄一が持て成したそうだから、一座の波乱に満ちた痛快で猥雑な挿話を今年の大河ドラマでちらっと紹介してみたりしたら楽しかったかもしれない。