イロアセル(新国立劇場)

新国立劇場(小劇場)で「イロアセル」(作・演出:倉持裕)を観た。言葉から固有の色が立ち昇る人たちが暮らす島の話しを、フルオーディションで選ばれた役者が演じるということで、役と役者のVoiceを楽しみに出かけたのだが、期待に違わずそれぞれの色が響き合って創られた舞台だったと思う。島の人たちの言葉は色に乗って多くの人たちに認識されるが、言葉に色を持たない本土から来た囚人がいる檻の前では、島の人たちの言葉も無色透明になり他人に認識される心配がない、という設定なのだが、この囚人の台詞に勢いと質量があって、芝居の中では一番色が強かったかもしれない。顔が見える肉声から匿名の文字情報に至るポジションの違いは、こうしてブログを書く身にとっても考えさせられる話題で、時として倫理的な問題ではあるけれど、ポジションをずらしながら使い分ける姿勢に人間味が感じられるようにも思える。