須賀敦子が選んだ日本の名作

須賀敦子編「須賀敦子が選んだ日本の名作」(河出文庫)を読んだ。未読の作品も多く、その中でも林芙美子「下町」の体温と湿り気、太宰治「ヴィヨンの妻」の蹈鞴笑いと死生感、深沢七郎「東北の神武たち」の俗臭の奇態さ、庄野潤三「道」の穏やかさなどが印象深かったが、石川淳の「紫苑物語」は白眉と感じた。須賀敦子の本は何冊か再読しているが、30代半ばでこれだけの作品のイタリア語訳という仕事を成し遂げられたことに頭が下がる。